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【Part1】「他人から見ると嫌な仕事でも楽しめるんです」FiNC副社長・元みずほ銀行常務・乗松氏、67歳のベンチャー魂

スマートフォンで専門家のオンラインヘルスケアサポートが受けられる「FiNCダイエット家庭教師」や、法人向けのウェルネスサービス「FiNCプラス」などを提供する、モバイルヘルスに特化したテクノロジーベンチャー、FiNC。

同社は創業4年目にして社員も100名を超え、急成長を続けている。今年の4月に設置したアドバイザリーボードには、元ミクシィ社長の朝倉氏、元LINE社長の森川氏、他19名の実績豊富な錚々たるメンバーが就任し、注目を集めた。

代表取締役副社長の乗松氏もまた、みずほ銀行常務、協和発酵キリン常務、協和発酵フーズ社長、総合商社ミヤコ化学社長など、幅広い企業経営の経験を持つ人物だ。

しかし乗松氏が同社に加わったのは、2年前。FiNCの成長ストーリーが描かれ始めたばかりのタイミングである。

36歳年下の創業社長・溝口氏の理念と熱意に惹かれ、14番目のメンバーとして常勤で入社し、同社を牽引してきた乗松氏に、その物語と人生観・仕事観を伺った。

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3.11で人生観が大きく変わりました

—みずほ銀行を辞められた後は、協和発酵に入られたんですよね。

はい。協和発酵は医薬・食品・バイオ・化学の4部門を持つユニークなメーカーで、僕は食品部門、協和発酵フーズの社長になりました。

キリングループとの統合後は協和発酵キリンの常務を経て、総合商社のミヤコ化学の社長をやったり、組織改編・分社化・経営統合などいろいろな経験をして、何でもできるという妙な自信もつけて、非常に居心地が良かったんです。

みずほ銀行時代もシステムトラブルがあったとはいえ、役員だったので広い役員室があり、お迎えのドライバーもいましたし、秘書もいました。報酬もある程度はありました。

このまま安住していて良いのかな、と思っていたら・・・3.11が起こりました。人生観が大きく変わりましたね。

—このタイミングだったのですね。

銀行員の時も阪神淡路大震災を単身、芦屋で経験していたんです。ドカーンと突き上げられて・・・あの原体験があった中で3.11が起こって、今度は娘が仙台にたまたま出張に行っていて、老朽化したビルの上で震度7を体験したそうです。

それで、自分はこんなに居心地の良い場所にいて良いのだろうか、生きているうちに何かやらなければならないと思って、環境未来都市構想という岩手県の大船渡市、陸前高田市、住田町の復興事業に関わりました。

農協や電力会社と交渉したり、農地転換をしたりして、大きな太陽光発電所を作りました。その後は地域の医療をICTで結ぶプロジェクトに奔走して、その頃に社長の溝口と出会いました。

若いのに非常に理念が高く、熱い思いを感じたので、月に1度か2度来てアドバイザーや顧問として手伝いたいと思っていたら・・・気がついたら会社を辞めて、常勤役員として来ていました。笑

—ベンチャーの若い社長が、自分の父親くらいのご年齢の方にNO.2、No.3で来て欲しいと声をかけるというのは、なかなかイメージが湧かないと思うんですよ。本当にすごいです。

そうですね。最初の頃は永田町のオフィスで、15人くらいがぎゅうぎゅう詰めでやっていました。広い役員室がちょっとだけ懐かしくなりましたよ。笑

出社初日のエピソードとして後から聞いた話ですが、オフィスの下にジムがありまして、溝口はその日はジムで寝ていたらしいんです。僕が出社したら廊下で人がミノムシのように転がって寝ていたので、ジムにいた人に「あそこで寝ているのはみんな社員だよね?」と聞くと「そうです」と。

その時溝口は「ヤバイ、社長までこんなところで寝ているのがバレたら、新しく来た乗松さんに辞められちゃうんじゃないか・・・」と思ったらしく、ジムでじっと息を潜めて隠れて、僕がオフィスに上がった瞬間にそっと抜け出して、何事もなかったかのように「おはようございます!」と現れたそうです。笑

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どのようなリスクがあるかは大体読めるんです

—まさに創業期ならではのエピソードですね。笑 その日から一気に稼働し始めたのですか?

はい。当時はCFOを務めていて、まだ銀行の調達がなかったので銀行からデッドを借りようとか、あとはいろいろな部門の伝票とか・・・経理担当なんていなくて、ジムのトレーナーが経理をやっていたんですから。みんな兼務兼務ですごかったですよ。笑

—なるほど。笑

今はプロダクトが出来て、これをきっちり売っていかないといけないのでアポを取って、最初は一緒に行ってあげたり、この会社だとどうすれば刺さるのかを考えたり、前向きなことをする一方で、今の肩書きはCAO(Chief Administrative Officer)兼CWO(Chief Wellness Officer)。CWOは要するに、「この歳でも健康でしょ」ということで社員の健康をマネジメントしていく。更には対外的にウェルネス経営の大切さを発信していく。CAOは本来は管理部門を統括していて、会社が大きくなってくるとリスクをどうするかとか、そういった役割を担います。しかし現実は、何か問題があると必ずお詫びに行く係なのでCAO(Chief Apologize Officer)なんですよ。笑

個人のお客様でも法人のお客様でもほとんどお詫びにいっています。そういった意味で重宝がられていますね。

—完全にネタですね。笑 でも守ってくれる方がいると突き進めますし、現場も回るでしょうね。

そうですね。リスクの回避についてはいろいろな経験をしてきています。いろいろな現場を見ているので、発展段階でどのようなリスクがあるかは大体読めるんです。これを予防してあげないと、若い社長だと気がつかずに突き進んでハマってしまう人もいると思います。

うちの3代表制はバランスが取れていて、すごく良い組み合わせだと思います。僕がいて、ゴリゴリ前向きな外資系出身の副社長がいて、若いけれどしっかりしていて突き進む溝口社長がいる。

—これだけ年齢差が大きい中で、ちゃんと体制として回っていると外にも言える会社は少ないですよね。

なかなか難しいですよ。最近、僕にそっくりな人はいませんかとよく言われます。簡単に来てくれたので、こういう人がたくさんいるのかと思いましたって。笑

—当日からハードワークしてもらえる方に来てもらえるイメージはなかなか湧きませんね。口だけ出すのと、一緒に汗をかいてくれるというのは温度が全然違いますよね。

汗どころか血みどろですよ・・・。笑

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人生はATM、A(明るく)、T(楽しく)、M(前向きに)

—ちなみにご家庭でのお子様への接し方はどのような感じだったのでしょうか?昔から今までずっとハードワークじゃないですか。

はい、家内には迷惑をかけました。新婚旅行以降、12時前に帰ったことはほぼありません。一度早く帰って、掃除している家内の耳元で「帰ったぞ」と言うと「ビックリさせないで!早く帰る時くらい電話をください」と怒られました。我が家は早く帰る時に、許可を得なければならないんです。子供からすると、父親はほとんどいなかったと思います。

—土日も忙しかったのですか?

土日も忙しかったですね。平日も、ニューヨークにいる時が特にひどくて、12時まで仕事をして、気分転換に同僚と2時くらいまで麻雀をして、4時半くらいまでピアノバーで飲んで食べて、朝日が昇る中を帰って、シャワーを浴びて着替えてネクタイを締め直して出勤するという生活をしていました。

—タフですね。お子様たちとは今でもよくコミュニケーションを取られるのですか?

はい。最初は金融機関にだけは行かないと言っていたのですが。笑 結局2人とも金融機関に進みました。難しい相談は今でも僕に来ます。この話をしたいけれど誰か知っている人はいないかとか、これはどう考えるのかとか・・・家庭のことは家内に相談するのですが、仕事や人生観になると全部僕に来るので「あんたは家に全然いなかったくせに、ズルい」と家内が僻むんです。

—本当ですよ。笑 でもそんなに家にいなくても、お子様たちは背中を見ていたんですね。

まずい・・・こんなことペラペラ喋っていたら、また怒られます。笑

—Bizerのユーザーさんも、ちょうど30歳くらいで起業して結婚して出産して、ライフイベントが重なるタイミングなんです。そこでの働き方や時間の作り方については、皆さん本当に悩んでいます。

そうですよね。弊社でもやはり悩んでいる社員がいるので、以前『ノリノリご家族説明会』というのを実施して、心配な奥様とご両親、お子様をお招きして、「安心してください。こんなに良い会社です」と会社の説明をしました。

「忙しいかもしれません。ご迷惑をおかけしていますが、僕らがついています」と言うと、皆様安心して帰ってくださります。ベンチャーに就職して一番心配なのは、ご両親や奥様ですよね。

—そうですよね。そのタイミングを終えて、乗松さんのようにきちんとご家族との関係が良くなっているというのは素晴らしいですね。

しっかり働いているというのは、見てくれていたんですかね。

—そうですね。少なくとも腐っていなかったというのは見えていたのでしょうね。楽しみながら、仕事に誠実に向き合って。

確かに、夫婦間で決め事がありました。子供の前でお互いの愚痴を言わない、悪口は言わない。家にいたら明るく楽しくという。

人生はATM、A(明るく)、T(楽しく)、M(前向きに)と、若い人にもよく言っていて、仕事は真剣にやらないといけないのですが、心にそういった部分があるのとないのとでは、ずいぶん感じ方や楽しさが変わるじゃないですか。ぜひ、そういった気持ちを持っておくと良いよと伝えています。

—今ベンチャーに入られてまたお子様たちと同様、若者たちに背中を見せていますね。

そうですね。感じ取ってくれたらいいなぁとは思っています。

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話を伺って、なぜ乗松氏がベンチャー企業の常勤役員として、30歳以上も歳の離れたチームにフィットできているのか・・・その理由がよく分かった。乗松氏は社会人生活をスタートさせたその日から、いや・・・更に以前の学生時代から、仲間を大切にし、与えられた環境でベストを尽くし、常にハードワークをし、どんな仕事にも楽しみを見つけ出す、いわゆるベンチャースピリットを持ち続けてきたのだ。

乗松氏がFiNCに惹かれたのも、当然のことだろう。

「一生に一度のかけがえのない人生の成功をサポートする」というFiNCの掲げるビジョンの元、乗松氏は今日も、若者たちに交じって汗を流す。そしてまた乗松氏自身にも、心強いサポーターがいるようだ。

今でも家内に散々言われます。「私がどれだけ苦労したと思っているの、成功するまで死なないで」って。なので家内が一番、健康を気遣ってくれますね。

-End-

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