「いろんなことを想定して、いろんなことを覚悟して起業したので、大体のことは’あるある’です」LiB代表、松本氏の起業家としての覚悟【Part1】
- インタビュー
導入
ハイキャリア女性のための転職サービス「LiBz CAREER(リブズキャリア)」を運営する株式会社リブ。
代表の松本氏は学生時代に一度起業して、新卒でリクルートに入社。その後トレンダーズにCOOとして入社すると、東証マザーズへの上場を実現。2014年に、自身2度目となる起業でリブを立ち上げた。
ベンチャーの立ち上げから上場までを経験し尽くした松本氏が目指す、次なるステージとは一体どこか。経営哲学と想い、そして新たな挑戦について、お話を伺った。
学生時代に起業を経験
ー幼少期の頃から起業したいという想いはあったんですか?
ありました。自覚したのは高校・大学くらいからですけど、親曰く、小さい頃から言っていたみたいです。物心ついた時から。
ー物心ついた時からですか。きっかけはなんだったんですか?
家が家業をやっているからですかね。父も祖父もサラリーマンではなかったので。
大学生の時には、一度自分で起業しました。ビジネスのモノマネをしたかったっていう感じですね、サークルに近いです。起業している先輩がいたので教わりながら。
事業としては、大学生をデータベースにして、アルバイトの紹介とか派遣とか、旅行の手配をしていました。2,3年やって、学生なりには伸ばすことができていました。
ーすごいですね。今だと起業に対するハードルが下がっていて、学生起業をする人も多いと思うんですけど、当時は珍しかったんじゃないですか?
そうですね、全然いなかったですよ。でもやっている先輩がいましたし、社会人のおじさんとかも起業しているじゃないですか。おじさんに出来るのなら、自分にもできるかなって(笑)
ーなるほど(笑) 会社設立時に困ったりはしませんでしたか?定款を作ったりとか、役所に行ったりとか・・・。
行政書士と弁護士に聞きながらやったので、特に困りはしなかったです。
ちなみに当時は資本金が1000万円ないと株式会社が作れなかったんですけど、米国なら1ドルから作れたので米国に法人を作って、その日本支社ということで日本に会社を持ってきました。
なので、アメリカ大使館に行って申請とかしていましたよ。
ーかなりテクニカルですけど、その辺の知識はどうやって身につけたんですか?
自分で調べてです。あと先輩も同じことをやっていたので、聞きながら。
それでも分からないところは行政書士に聞いたりとか・・・。分からないことは多かったですけど、聞きながらやっていたので困ってはなかったです。
ー卒業後は会社に残らずリクルートに就職されたわけですが、これはどういったご理由で?
リクルートとか電通とか、当時伸びていたサイバーエージェントとかを見た時に、あまりに僕の会社と世の中の良い会社の差が凄かったので、勉強しにいったという感じですね。
当時のビジネスも学生なりに月商も結構ありましたが、学生のノリと知識で闇雲にやっているだけだったので、きちんとした事業を作りたくて。単にお金儲けがしたかったわけでもなかったですし。
覚悟した通りに苦労しているので動じない
ー今回のLiBが2社目の起業となるわけですが、新たに苦労している点はありますか?
僕、リクルートのあとにトレンダーズを経由していて、そのトレンダーズでベンチャー経営に携わっているので、今の苦労は全て「既視感」がある、というか「覚悟済み」なんです。
今から知識ゼロにして、もう一回大学受験やれって言われたら、大変といえば大変なものの、やり方は分かってるじゃないですか。英単語の暗記大変だなとか、日本史めんどくさいな・・という感覚に近くて、それ自体は苦労なんですけどトラブルという感覚ではないんです。
そういう意味では、この会社始めてから問題や課題は他社同様に山積みですけど、想定外のトラブルというのはほぼ無く、いまのところ殆どの事が「想定内で覚悟済み」です。覚悟してても大変なモノは大変ですけど(笑)
まぁそれらはあくまで今のフェーズの話で、これから先は自分の知らない苦労も沢山出てくるのだと思います。
ーなるほど、素晴らしいですね。
もちろん事業を伸ばす為に毎日苦労はしているんですけど、それも想定内という感じです、大変ですけど(笑) そもそもベンチャーってそういうモノじゃないですか?計画通りに順調にいくはずもないし、やってみなければ分からない事だらけだし。
リブも他社同様に毎日、苦労や課題ばかりだし、悩む事も多いんですけど、ベンチャー経営をトレンダーズで7年やって、立ち上げとか2億、3億、5億、10億のフェーズとかも経験しているので、たぶんトラブルに耐性がついているんですよね。
なので、「覚悟した通りに苦労しているので、いちいち動じない」っていうのが近いです。やっぱり大変ですけど(笑)
ー想定外のこともあまりないのでしょうか?
そうですね。立てた計画の数字がズレることってトラブルの内に入らないですもんね、当たり前っちゃ当たり前で。創業初期になかなか優秀なエンジニアが集まらないっていうのも想定内の苦労です。でももがいてもがいて頑張って結果、集まったし。
お客さんも最初集まらなかったけど工夫して突破したとか・・・もう’あるある’ばっかりです(笑)
7年間、IPOまで持っていく中で、大変なことはフルコースで味わっていて、それを元に起業したので、最初に覚悟した通りっていうか。「この時期は苦労するんだろうな」という通りに苦労しているのでそんなにビビらないんです。
もちろん楽に進んできたわけではなくて、トレンダーズを辞める半年前からは土日も平日の夜も潰して起業の準備をしていましたし、起業してから1年間は土日返上で働いていましたし。でもそれも想定外の苦労という感じはしなくて。そもそも起業ってそういうものだと思って覚悟していたので。
エンジニアの採用も月に何十人と会って、一生懸命口説いて、フラれてフラれて、もう何人にフラれたんだろうってぐらいフラれて・・・。でもそれも想定内じゃないですか、みんなが採用に苦労しているエンジニアさんがそんなに簡単に採用できる訳がなくて。なのでそのこと自体も動じるほどでもないですよね。さすがにあそこまでフラれ続けると凹みますけど(笑)
ーもう覚悟が決まっていたと。
偉そうに言えばそうですね。いろんなことを想定して、いろんなことを覚悟して起業したので、だいたいのことは’あるある’です。何が起きても「そう来ると思って覚悟してました」っていう感じでやっています。
そもそも起業とか経営って、やっつけてもやっつけても敵が次からどんどんやってくるものなので、いつもファイティングポーズを取り続けるのが大事ですよね。
商売でなくゲームに近い起業が増えてきている
ーその中でも「立ち上げてみて意外だったな」ということをあえて上げるとすると、何かありますか?
そうですね・・・起業の敷居が下がったことは良いことだと思う半面、商売の本質からかけ離れた「起業ゲーム」のルールが出来上がっているのにはすごく違和感があって。
例えばちょっと前にはフリーミアムモデル(無料で広めて一部のコアカスタマーからのみ収益を上げるモデル)が騒がれましたけど、フリーミアムで一気に拡げてマネタイズは後からって、よほどの勝ち組じゃないと成功しないモデルじゃないですか。日本で数えても成功例は何個もない。
でも最近の起業の多くは、売上はいったん無視みたいなケースが多くて。顧客に価値を提供し、その結果としてきちんと対価を頂いてキャッシュフローをきちんと回しながら伸ばしていくっていう一番商売で難しくて大事なところは一旦目をつぶって資金調達をしたりして。
起業が商売じゃなくて「起業ゲーム」になっているなぁ、というのが凄くあって。
ーなるほど。
僕はそこは元々否定派で、最初からちゃんと売上を上げていこうと。売上を上げながら、スケールも実現していこうと。その2つを追う事こそ(難しいけど)本来あるべき姿だと思っていて。
なのでリブでも売上はきっちり見ているし、一方で利益も出していこうと思っていて「商売」として回るように意識してやっているんですけど、最近は「商売」じゃなくて「ゲーム」の傾向が強くなってきている気がするんです。
そこに巻き込まれるというか・・・。「松本さんってどうイノベーションされるんですか?」とか「もう売上とか狙っちゃうんですか?」とか、商売の本質からかけ離れたノイズが多いなというのは起業してみて感じました。
ーそういったお話が必要以上に外部から上がってくると。
投資家さんとかは別に良いんですよ。投資家さんはあくまで投資をする方じゃないですか。彼らにスケーラビリティを求められたりとか、収益性を聞かれるのは当たり前で。我々もそこはきちんと答えていますし。
それが外野というか、自分でベンチャーをやっている人たちではない外部というか・・・商売じゃなくて「アイデアが面白ければ良い!」とか「奇抜だから良い!」とか「人がやっていなければ良い!」とか・・・そういうのが全体の空気として正しいみたいなのがあって。
それが、何となくやりづらいなっていうのはありました。
苦労の多くは想定内であると語る松本氏。周囲の空気に多少のやりづらさを感じつつも、自身の意思は決して揺らぐことなく、非常に強い覚悟で起業・経営と向き合っていることが分かる。
そして目指すその先には「働き方のフォーマットを変える」という大きなビジョンも存在する。
-Part2に続く-

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