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【Part2】「地べた這いつくばり型のベンチャー企業です」マイファーム代表、西辻氏の想いを形にする経営

会社のビジョンや自身の想いを書き物にして伝え、毎朝全員で読むことで、社内に一体感を作り出してきた西辻氏。「マイファームファミリー制度」というものも作り、従業員全ての誕生日と、大切な人の誕生日には、自らメッセージとプレゼントを贈っているという。

マイファームでは社員が一番大事と語る西辻氏だが、こうした考えに行き着いたのには、大きなきっかけがあった。

社員半減、売上も落ちて社内が崩壊

ーもともと文章を書くのは好きだったんですか?

いえ、大嫌いです(笑) 書かないといけないな、と思ったんです。

ーいつ頃からそう思ったんですか?

実はきっかけがありまして、会社が崩壊してからですね。

ちょっとこの辺りのお話をしますと、震災があった時ですね。今だから言えるんですけど、放射能の話があって、僕たちの貸し農園が半分くらい解約されてしまったんです。

債務超過で潰れるんじゃないかってところまでいって、会社の危機の時に、僕は被災地にいたんです。日本で一番耕作放棄地が出ている場所に、耕作放棄地の会社がいくのは当たり前だって思って、被災地支援をしようと。

そしたら「沈み行く船なのに船長がいないじゃないか」って会社で問題になって。

ー被災地で西辻さんは何をやってたんですか?

津波の塩害を直す土壌改良材を開発していました。これは、たぶん全国の研究者はみんな自分でもできるって思ったんじゃないですかね、難しいことではないので。

でも研究者と実業家って離れているのでやれていなくて。僕が発明したわけではなく、僕がやったってだけですね。

ーでもそれって大事ですよね。事業なんてそんなもので、誰でも思いつくものばっかりじゃないですか。やるかやらないかの話だと思いますね。

そうですね。ところが会社は沈み行く船で、帰ったら一緒に創業した人から「西辻くんが会社を辞めるか事業を切り離すか」って言われました。

で、「マイファームは守るから代表を交代しよう」って改めて言われたのですが、その際に社内が混乱したため、創業メンバーではない取締役を代表にして私も共同創業をした方も降りました。

ー売上も落ちてたんですよね。

そうです。資本食いつぶしてて。

そのまま浮上するきっかけが掴めず、2013年にまた代表に復帰することになりました。

part302

エンジェル投資家からの資金調達

ーその間ずっと厳しかったんですね。塩害を直す事業は大きなビジネスにはならなかったんですか?

当時はならなかったですね。寄付金も仮設住宅や道路の復旧に使われて、農業系はほぼ回ってこなかったんです。ただこの事業は、後々活きてくるんですけど。

なのでその時はまずエンジェル投資家の方々を回って、お金を出してもらって。貸し農園も学校も厳しいので、飲食店や流通を立ち上げて何とか食いつなぎました。

そうしたら2013年の終わりくらいですかね、風向きが変わって、貸し農園も復活してきて。今となっては農業だ農業だって言われるじゃないですか。急激に復活してきました。

ーエンジェル投資家の人たちってどうやって見つけてくるんですか?

人脈ですね。

例えば江副さん(リクルートの創業者)にも出して頂いてるんですけど、貸し農園を始めたタイミングで秘書の方を通じてお声がけ頂いて。元々農業がやりたかったというお話をされて、それで繋がったりとか。

あとエンジェルの方に誘って頂いた席で、いろんな人とお会いさせて頂いたりとか。そうして人脈が出来ていきました。

ーそれは西辻さんの人柄ですね。低姿勢で謙虚で誠実じゃないですか。高校生なのに先生や親の言うことを聞いたりとか(笑) ポストいくらとか、ファイナンスの知識はあったんですか?

そこは全部勉強しました。勉強あるのみです。

ー本当にすごいですね・・・。

part303

マイファームが見据える今後の農業

ー今後の話を聞かせてもらえますか。

今は順調に回っていまして、貸し農園が全国で107カ所、農業学校が全国に5校あって、八百屋さんが3カ所あって、レストランが福井県にあるっていう状況です。

で、学校からは1年間で約100人の卒業生が出るんですけど、就農率高めないといけないので、卒業生が独立する際の農地のサポートとか農具のサポートとか、そこを強化していきたいですね。

ー元々抱いていた想いが、どんどん形になっていっていますね。

そうですね。卒業生が農地を使ってっていう。

ー人を育てているので余計加速していきますよね。これを数年でやってるってすごいですね。卒業生は今後どのくらいに増やしていきたいんですか?

2017年に2000人にしたいんです。農業を新たに始める人って、1年間で1万人くらいで。シェアを獲るというよりは、マーケットを大きくしている感じですね。

ーなるほど。農業をする人はどのくらいになっていくんですかね。一世帯一農園とかもありえそうですよね。

目指したいですね。それがビジョンにもある「自産自消ができる社会を作る」ということですね。

今、日本の耕作放棄地は40万ヘクタールなんですけど、専業農家1万人になれば使い切るはずなんです。そこを埋めたいっていうのが、マイファームの想いです。

ー会社も大きくなって、社員も増えていますよね。

そうですね。売上1億円くらいまではバックオフィス系も全部自分でやっていましたが、今では人事や経理や財務の担当もいます。

でも彼らがやっていることも分かっているので、仕分け見て「これ違うよね」って指摘したりします。財務から日繰り表が送られてくるのを、家で毎日見てます(笑)

ーそこまで見てるんですね。

任せるっていうのと、丸投げってのは違いますよね。

卒業生を連れて海外で農業をしたい

ー会社としては今後はIPOとかも?

IPO目指してますね、海外に行きたくて。

実際取引きすると、海外の会社だと非上場でも問題ないんですけど、日本の会社だと上場してるのが当たり前なんだろっていう感じなんです。規模感が違うんでしょうけど、悔しいなって。

海外に卒業生を連れて行って、向こうで農場を作りたいんです。

ーなるほど。IPOの目的が明確で良いですね。

日本は農地の約10%が耕作放棄地なんですけど、世界でみると約25%が耕作放棄地なんです。海外は事情がちょっと違って、気候の問題があって、突然の温暖化とか。

ーでもそれって、農業やりたいけどやれないっていうことじゃないんですか?

そこで、震災の時に開発した塩害を直す技術が活きてくるんです。それを持っていきたいんです。

ーなるほど・・・この話すごい。めちゃくちゃカッコいいですね(笑)

活かすのは今だなって。

ーお話伺ってて、やはりこれも西辻さんの人柄ですよね。行動力とか。西辻さんだから人やチャンスが引き寄せられて、点と点が繋がっていくんだなって。

うちの事業モデルは誰も真似できないんですよ。

切り出して、貸し農園だけとか、学校だけとかなら出来るかもしれませんが、事業に物語があって、こう変えたいんだっていう想いがあって、これは真似できないんです。

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今年で創業から9年目を迎えるマイファーム。西辻氏自身は「成長が遅い」と語る。確かに近年では、数年で会社を急拡大させてIPOを果たしたり、世界のトップにまで辿り着く企業もある。

しかし自らが時間をかけ、泥臭い体験をして得た経験や知識、そしてその誠実な人柄が生み出した人脈が、度重なる危機でマイファームを支え、復活へと導いてきた。マイファームはこの8年間で、壮大なビジョンを実現するための、強い根を張ったのではないだろうか。

初夏。作物が豊かな実りを迎えるように、西辻氏の想いを乗せたマイファームも今、世界に向けて大きな飛躍の時を迎えている。

-END-

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