起業スイッチ

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起業をするときに、ついつい忘れがちなのが自分の役員報酬の事。

毎月同額にしないといけなかったり、報酬を変更するタイミングによっては税金計算上の経費(損金)にならないペナルティーがあったりと気をつけなくてはなりません。

役員報酬について知っておくべき3つのポイントについて税理士と社労士が解説します。


榊社労士
最近は起業も多くなってきていると思いますが実感はありますか?
村田税理士
多いですね、クラウドソーシングなども広まってきたり、いつでもどこでも働けるという社会になってきているのかなという感じですかね。
そんな起業に関する相談で多いのが── 
榊社労士
役員報酬についてですね。サラリーマンのときはあまり意識していなかった給与明細の控除項目について教えてほしいとか。
村田税理士
基本的に毎月同額(定期同額)とするという税務上のルールとかも見落としがちで、何ヶ月か経ってから売上が入ってきて、さあ役員報酬をどうしようかと。
榊社労士
そのあたり、起業する時には意識しない方も多いですね。役員報酬について、起業するにあたって知っておくべきポイントとして3つ見ていきましょう。

ポイント① 定期同額(毎月同額)

村田税理士
先ほども触れましたが、役員報酬は基本的には毎月同額とする必要があります。
榊社労士
役員は「雇用契約」ではなく「委任契約」なので残業という概念はありませんが、税務上のルールとしても毎月同額にしないといけないんですよね?
村田税理士
はい。例えば決算間近になって予想外の利益が出たときに、このままだと法人税が多額になる。法人税を払うくらいならば── 
榊社労士
自分の役員報酬にしてしまおうと。
村田税理士
という利益調整を税務署は認めませんよ、という事ですね。会社設立から3ヶ月以内、2年目以降は事業年度開始から3ヶ月以内であれば役員報酬を変更してもOKです。
榊社労士
事業年度のスタートの3ヶ月であれば決算前の利益調整にはなりませんね。
村田税理士
あと、前年の決算が確定するのに2ヶ月くらいかかりますので、前年の利益を見てから報酬を変えるためにはそれくらいの猶予期間は必要という趣旨ですね。

ポイント② 社会保険料について

榊社労士
毎月同額の役員報酬で、みなさんびっくりするのが社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)の高さですね。
村田税理士
厚生年金は毎年保険料が上がってますからね。
榊社労士
そう。話が脱線しますが平成29年まで毎年9月に厚生年金保険料率が改定されますので、役員報酬が同額でも毎年9月に給与計算を再計算する必要がありますが、見落としがちですね。
村田税理士
半額が会社負担という事も見落とすケースも。
榊社労士
ありますね。社会保険料は納める額の半額を給与から天引きして、残り半分を会社が負担して納付します。給与からずいぶん天引きされていると思ったらさらにもう半額も会社から払わないといけない。
村田税理士
この社会保険料について小ネタがあるんですよね。
榊社労士
はい。「役員報酬は社会保険料の等級のハザマを狙え!」です。
村田税理士
本のタイトルみたいですね。どのような内容ですか?
榊社労士
こちらの社会保険料の料率表を見てみてください。
社会保険料は報酬の何%というような計算方法ではなく、報酬の金額に応じて段階的に増加していきます。
村田税理士
例えば役員報酬25万円の人だと25万円以上~27万円未満の行の社会保険料になるから健康保険料が25,922円、厚生年金保険料は46,352円ですね。
(東京都 平成27年9月から)

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榊社労士
はい、この金額の半額を給与から天引きすることになります。で、役員報酬を24万9,999円にしたらどうなりますか?
村田税理士
25万円「未満」の行の保険料になるから、健康保険料が23,928円、厚生年金保険料は42,787円。役員報酬を1円減らしただけで結構保険料が安くなりましたね!

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榊社労士
これが等級のハザマを狙った役員報酬の効果です。毎月、健康保険料が1,994円、厚生年金保険料が3,565円安くなりますので、1年間で6万円ちょっとの保険料の節税になりますよ。
村田税理士
社会保険料の仕組みを知っているとこういったテクニックも使えるわけですね。
榊社労士
ただし、等級を下げたことにより、私傷病で働けなくなったときにもらえる傷病手当金の額や、老後に受給できる老齢厚生年金の額が減少するなど、保険料が減った半面、給付側にも一定のマイナスインパクトがあることは留意しておいてください。
さらにもう1点、注意しなければならないのが通勤手当です。社会保険料の対象となる標準報酬月額には役員報酬だけでなく通勤手当も含まれます。従業員であれば残業代も含まれますのでご注意ください。

ポイント③ 役員報酬を変更した場合の税務ペナルティー

榊社労士
さきほど、役員報酬は事業年度開始から3ヶ月以内なら変更可能と聞きましたが、それ以降に変更するとどうなるんですか?
村田税理士
税務署は利益調整を認めないということをお話しましたが、まさにそのとおりの税務ペナルティーを受けることとなります。
次の図を見てください。3ヶ月以降に役員報酬を変更した場合、変更した部分が不当な利益調整とされ、法人税の計算上の経費=損金とならなくなります。

(ケース1 役員報酬を増額した場合)
3-01

(ケース2 役員報酬を減額した場合)
4-01

榊社労士
損金にならないというのはどういうことですか?
村田税理士
例えば売上1,000万円、経費は役員報酬のみという会社の場合、役員報酬が1,000万円であれば会社の利益は0円なので利益に対する法人税はありません。
榊社労士
売上1,000万円 - 経費1,000万円 = 利益0円ですね。
村田税理士
ところが、本来は毎月50万円×12ヶ月=600万円の役員報酬を400万円上乗せしてしまった場合には、役員報酬1,000万円のうち上乗せした400万円は経費にならないので── 
榊社労士
売上1,000万円 - 経費600万円 = 利益400万円として税金が計算されるということですね。
村田税理士
はい、ざっくり100万円の法人税がかかります。同じように1,000万円の役員報酬を支払っているのに、毎月同額のルールと変更は3ヶ月以内というルールを守らないと余計な税金を支払うことになります。
榊社労士
役員報酬については起業前に3つのポイントをしっかり押さえておきましょう。

 

専門家プロフィール

村田 光平(むらたこうへい)
公認会計⼠、税理⼠、⾏政書⼠、公益社団法人日本監査役協会会員。
2005年に中央⻘⼭監査法⼈、2007年に京都監査法⼈東京事務所を経て、2013年より税理⼠事務所を開業。年間50社の会社設⽴⼿続を⾏い、法務・税務の両⾯からサポートを⾏うスタートアップ企業のエキスパート。

 

榊 裕葵(さかきゆうき)
ポライト社会保険労務士法人 社会保険労務士。
上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務後、社会保険労務士として独立。勤務時代、常に経営者の側で仕事をしてきた経験も活かしながら、スタートアップ企業の労務管理体制の構築や、助成金申請の支援を積極的に行っている。

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